■おがわ

 静岡市馬場町38
 (054)252-2548
 営/9時30分〜18時30分ごろ 休/水曜

●浅間神社の参道にある茶屋
 浅間神社へ続く浅間通り商店街は、ここ数年の間に改修工事が進み、すっかりきれいになった。車道側の柱がない片持ち式のアーケードに加えて、電気や電話などの電線も地中に埋め込まれたので、開放感がある明るい商店街に生まれ変わっている。
 浅間神社寄りの一番街から駿府城寄りの五番街までは約600メートル。門前の赤い鳥居を思わせるアーチから歩いてすぐの四番街の東側に、名代おでんの暖簾を掛けた「おがわ」がたたずむ。
 店頭のガラスケースには、のり巻き・いなり寿司・おにぎりなどが並べてある。夏のシーズンは、ソフトクリームやかき氷を買うこともできる。ガラスケースの後ろにおでん鍋が置いてあり、真っ黒のだし汁の表面に脂が漂っていた。
「このだしは50年以上ずっと継ぎ足しで使っているので、命の次に大事なんですよ」
 伝統の味を守るのは、小川末子さん(80歳)と嫁の光枝さん(51歳)。夏は朝晩2回の火入れをするほど神経を遣っている。この店は、末子さんが姑と二人で戦後に始めたそうだ。
「昭和16年の静岡大火や空襲のせいで、それまでやっていた運送業ができなくなって、女手だけで商売しなければならなくなったんです。それで、明治生まれの姑と嫁の私でおでん屋を始めました」
 だしは牛スジから取り、醤油で味付けしている。おでん種は18種類ほどあり、信田巻があるのが珍しい。光枝さんは「静岡ではウチだけじゃないかな」とつぶやく。見た目も茶色く、おでんに味が染みているのがよくわかる。サバやイワシのだし粉と青のりをかけていただく。なんだか疲れがすっと消えるような味わいだ。
 奥のテーブル席に腰を下ろして外を行く人を眺めていると、まるで旧街道の茶屋で休んでいる気になるから不思議だ。
「実家みたいでほっとするというお客さんも多いんですよ。買い物に疲れてくると、早くおがわで休もうって言いながら来てくれます」
 お盆で帰省する近所の人は、「おがわのおでんを買っておいて」と頼むほど。きっと、子どものころによく食べた味が忘れられないのだろう。駄菓子屋おでんの店らしく、おがわは夏でもおでんがよく売れる。かき氷とおでんをいっしょに食べられる店は、どこも人気なのかもしれない。
 静岡で好きなおでん種を聞くと、ダントツに人気なのが黒はんぺん。では、第2位に挙げるとしたら何か尋ねると、ジャガイモを挙げる人が多かった。それと並ぶのが、串にぐるぐる巻きになった糸こんのようだ。
 そういえば、全国的に人気の大根は静岡おでんにはほとんど入っていない。ある人が、静岡のおでんは肉系のだしだから、大根よりもジャガイモが合うと教えてくれた。肉ジャガという料理はあっても肉大根は見かけない。大根は、ブリ大根のように、魚系のだしに合うという主張だ。なるほど、それは理にかなった考え方かもしれない。
 おがわで使っているジャガイモは、北海道産にこだわっている。北海道のジャガイモは味が違う。種イモを持ってきて本州で栽培しても同じ味にはならないというから、土質や気候が関係しているのだろう。
 静岡おでんのなかで、おいしいジャガイモが食べたかったら、おがわに行くべし。

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